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ジャーナル

2020.04.27インタビュー

デザイナー・造本作家 駒形克己氏インタビュー

文字のないパズルのような絵本やハッとするような世界観など
うつくしい作品を生み出し続けているONE STROKE。
国内外で活躍する駒形克己さんにお話しを伺いました。

もともとデザイナーの駒形先生が絵本を作り始められたきっかけを教えてください。



絵本を作り始めたきっかけは娘の誕生です。娘が生後3か月くらいの時に、友人からプレゼントされた三体の派手な色の人形を見て目を回しました。それで気づいたのが、赤ちゃんの視覚にいきなり刺激的なものはよくないのかなと。それで娘の反応を見ながら、試行錯誤の末に完成したのが「LITTLE・EYES1はじめてのかたち」です。あえて文字を入れなかったのは、読み手自身の言葉に委ねたところがあって、親子のコミュニケーションがより深まればいいなと考えたんです。
今、3歳の孫がいますが、すでにスマートフォンに興味を示しています。ただねそればかりになっちゃうのはどうなのかと。乳幼児期は、脳が形成される大事な時期だからこそ情報の量より“経験の質” のほうが重要だと考えています。例えば、あまり外に出ない幼児が丸い形を見た時に、月や太陽は連想しづらいでしょう。幼児にとって興味の質も大事で、それは背景に“経験の質” がないと育めません。そして情報というものは、刺激的なものを与え始めるとますます刺激的なものを求める傾向があります。だから子どもには、少しゆっくりとした環境の中で、“経験の質”を高める工夫をすることが大事なのではと思います。私としては作品が親子の信頼関係を育むお手伝いと、“経験の質”を高めるツールになればいいなと思っています。


娘さんの育児を機に生まれた「LITTLE・EYES」シリーズ

作品同様、魅力的なワークショップを世界各地で開催されていますが、こちらも「経験」の機会ですよね。


ワークショップでは子どもたちに表現することで得られる楽しい発見や、プロセスを体感してほしいと思っています。今、学校での美術や図工の授業では、見本があって、限りなくそれに近づけるような指導がほとんどでしょう?表現するためのプロセスよりも、器用さや技術的なことに対し評価がされがちです。子ども達の「こんな風に考えたよ」「こんなとこに気づいたよ」という発想や着眼点はなかなか先生の目に止まりません。私は教育者ではないので、教育にもの申すというスタンスでは決してありません。しかし表現の分野では子どもたちに技術的なことだけではなく、ものの見方の大切さや、答えはたくさんあるということ、イメージや選択肢の幅の広さを知ってほしいと思っています。

私は大学でも講義を持っているんですが、学生とワークショップをしていて感じることは、表現というものに対して苦手意識を持っている人が非常に多いんです。もしかしたら小学校・中学校の美術の授業の評価に傷ついた結果なのかもしれない。最初「表現って苦手」と戸惑っていた学生が、ワークショップを重ねるごとに生き生きしてきて夢中になってハサミ動かしてね。自分で考えて体を動かすのって楽しいんですよ。先生が教えるような座学より、もっとフィールドワークなど学生が現場で体験するカリキュラムが増えるといいなと思いますね。

いろんな個性の子ども達や学生さんがいる中で、彼らに向き合う時に大切にしていることを教えてください。

大人には悪い癖があって、子どもを前にするとすぐに「教えよう」としちゃうんです。例えば子どもに「クジラはどう描くの」と聞かれたら、たいていの大人はクジラの絵や写真を見せる。結果、子どもはそれをまねします。もちろんまね自体が悪いものではないですが、答えを伝えることは、その子が考えたりや想像する機会を奪っているかもしれない。子どもの間に自由にイメージするのは大切で、感性は決して教えられるものじゃない。大人はそこを勘違いしないことですね。もちろんルールを守ることや秩序を伝えたり、大人としてのふるまいは大事にしながら。
私は学生達によく種の話しをします。種はあえて面倒な手続きをとって発芽するでしょう?皮と果肉に囲まれた中にいて、動物に食べられることで移動して、脱糞された場所で発芽のチャンスを待つ。肥料に囲まれていても適正な温度と水が加わらないと発芽しないんです。これは人間も同じ。種のポテンシャルって、みんな持っています。発芽できるかどうかは環境も大きい。子ども達はこれからの人たちで、だから何の種か大人が種類を決めつけてしまうんじゃなくて、いろんな視点でその子のポテンシャルを引き出す場、ツールや、方法などの環境を提供するのが大切だと思います。

これから社会に飛び出す学生さんに向けてメッセージをお願いします。


なにより失敗を恐れないでほしいということ。それから、現場での経験を大切にしてほしい。無駄な経験というものは何一つないから、失敗も含めて、経験はすべて自分の肥やしになります。子どもと関わる仕事であれば、子ども達と心の底から一緒に楽しむことも大事だと思います。子どもって動物的な勘があって「この大人と遊べない」と思ったらさっさと離れていきますから(笑)。子どもって残酷なことも言ったりするけど、自分と子どもの種(ポテンシャル)を信じて、畑を耕す楽しさを見つけて欲しいですね。

取材に同行した学生さんから\駒形先生、質問です!/

音楽など表現が好きなのですが周りや評価を気にして、表現が縮こまってしまいます。

表現の質を高めようとすれば圧倒的な練習の量があってこそ。絵も音楽もスポーツもそれは同じで、特に若いうちは量を意識する。量から初めて質が生まれます。もちろん基礎も大切で、基礎があって、なおかつ量と向き合えば、やがて質は高まっていきます。表現の質に到達したと勘違いしないためにも、ひたむきに量と向きって欲しい。「自分ってまだまだだな」って謙虚でいた方が頑張れたりするから。

海外に興味があり留学も決まっています。やりたいことのはずなのに準備をしながらも不安な気持ちも出てきて…

メディアの情報だけじゃなく、現地の人とカタコトでいいから言葉を交わして、そこからだと思う。私もロスに居た時、全然英語喋れないのにレコードジャケット作りたいって情熱だけで全部のレコード会社に飛び込みして…(笑)なかなか上手くいかなかったけど、その時は「自分が出来るようになることに憧れよう」って思っていた。「いつか出来る自分」を思い描いて一生懸命憧れていた。他人はよっぽどじゃないと自分に憧れてくれないけど自分だったら出来るからね。留学は成長のチャンス。ぜひ活かして欲しいです。

どうしたら先生みたいなかっこいい大人になれますか?

あはは(笑)種まきをすることでしょうか。種まきとは、言い換えれば経験の質を積み重ねる事とも言えます。その経験の質を高めるためには、努力も必要だね。経験の質はその人自身のものであり、それをいかに積み重ねていく努力を続けられるかを、心がけています。


あたたかくてすてきなアドバイスをありがとうございました!



駒形克己氏
1953 年静岡県生まれ。日本デザインセンターを経て、1976 年渡米。ニューヨークでデザイナーとしてキャリアを積んだのち1983 年帰国。1986 年ONE STROKE 設立。
以後多数の絵本を出版。1990 年ニューヨーク近代美術館MoMAミュージアムショップでの発売を機に、その活動は世界へとひろがる。2012 年急性リンパ性白血病を発病、翌年骨髄移植を受け退院。その翌年、 手話絵本の制作過程に密着したドキュメンタリー番組が放送され、同番組が国際エミー賞にノミネート。復帰後2014 年からは後進の指導にあたり、2016 年には、ボローニャ国際児童図書展にて、RAGAZZI SPECIAL MENTION AWARD を受賞、現在に至る。


「折ってひらいて」 (仏版:PLIS ET PLANS)
パリ近代美術館ポンピドー・センターの「視覚障がい者も健常者が共有できる本」のプロジェクトで生まれた。目を閉じて、触覚を頼りに「感じる」ことを楽しめる味わい深い一冊。


2020 年3月発刊の新刊「FRONT & BACK」
本をひらくとポケットがあり様々なアイデアが詰まったカードが入っている。自由な発想を広げながら、いろんな遊び方ができる一冊。


▼駒形克己氏の作品やワークショップ・展示会などの情報はこちら
https://www.one-stroke.co.jp/

▼Twitter
駒形克己(@KatsumiKomagata
ONE STROKE(@ONESTROKEnews

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