ジャーナル
2020.04.22就活コラム
世界一幸せな保育士になる!Happy保育士プロジェクト【前編】
リアルな保育の現場と、これからの保育の現場
【てぃ先生】×【株式会社Edulead 菊池 翔豊 氏】
各社が熱を入れる保育士の処遇改善とはどのようなもので、実際に保育士は働きやすくなっているのだろうか。現場で保育士として働くてぃ先生、複数の保育園を経営する菊池氏に、それぞれの立場から、処遇改善の現場と、今後の保育園の選びのコツを語ってもらった。
保育士の処遇改善として、まず給料アップに目が行きます。このことに関して、どう思われますか?
てぃ先生:保育士さんの就職フェアに参 加する機会も多いですが、お給料は実 際に以前に比べて高くなってきたと思い ます。確かにお給料が上がったらうれし いですよね。僕も学生の頃から「保育 士になりたい」と言っていましたが、担 任の先生や親から「給料が低いけど大 丈夫? 男性だし、家族を養ってゆけないよ」と心配されることも多かったです。
菊地さん:保育士は人命を預かる大変 な仕事。機械などでの代替ができない仕 事です。こういった仕事にこそ価値を見 出して、より多くの税金を投入し、給料 を高くすることはいいことだと思います。
てぃ先生:でも、現場感覚では、給料 が増えた実感はあまりない気も......。
菊地さん:求人票も、処遇改善費込み で給料を提示する会社と、抜いて提示 する会社があります。処遇改善費を含 めた給料を提示すると、当然かなり高く なるのです。処遇改善費の一部は、一 時金が法人に支給されたあと、誰の給 料にどう上乗せされるかがはっきりしな い部分もあり、求人票に提示された給 料がもらえないこともあります。それが さらなる不満に繋がるのです。
てぃ先生:本当、複雑ですよね。保育 士さんも、園長先生でさえ、どんな風 に変わったのかを理解していない人が 多い気がします。「あなたは今このキャ リアの段階にいて、処遇改善費がどのく らいで、この給料になっています」と図 解してくれたら、親切だと思いますけど。
菊地さん:そうですね。弊社では、基本給、処 遇改善などの手当、家賃補助を別に表示し、「見える化」するよ うにしています。
てぃ先生:ただ、給料を上げれば済む 問題なのかな?とも思います。お給料が 低いことを嘆いている保育士さんは確か にいます。でもそれは、お給料に対する 負担が大きすぎるからだと思うんです。それを考えると、いつ上がるか分からな い給料に期待するより、負担を減らした ほうがいいですよね。
負担軽減についても各法人ではいろいろ な取り組みをしていると思いますが、実 際の現場はどのような状況でしょうか?
菊地さん:認可保育園というのは、ほ とんど行政の補助金で成り立っていま す。そのため、補助金の給付が適正か を調べる行政監査のために膨大な書類 を出さなくてはなりません。だから保育 士の書類作成の負担が一向に減らない 訳です。今後行政の監査が簡素化され れば一番いいのですが。例えば毎日の 午睡チェック書類を、ICTで不要にする とか、ロボットに「今週はこんな保育を 実施します」「今日はこんな活動をした んだよ」と話すだけで帳票類が完成す るシステムを開発するとか......。
てぃ先生:ICTを導入している園は増え ましたが、職員20人に対してパソコン が2台だけというところも。それでは意 味がないですよね。あとは、職員が休 憩を取れないという声も多いですが「職員同士で声を掛け合ってなるべく取 るようにしています」、では根本的な解 決にはならないと思うんです。休憩が取 れない原因がお昼寝中に連絡帳を書く 習慣なのであれば、連絡帳を書く業務 を後ろの時間にずらすか、簡素化する か。保護者に連絡帳を書くという方法 より、口頭での報告をいかに上手くやる か、という工夫を凝らしてみるのも良い でしょう。今後保育士が充足したら、 連絡帳の充実化をしてもいいわけです し。このように現実的で具体的な対策 を考えなければ、いくら給料が増えても 不満はなくならないと思います。
なるほど。保育士さんの負担軽減のために、具体的な対策を取っているか。ここも就職する園選びのポイントになりそうですね。ほかに園を選ぶ際には、どんな点に気を付けたらいいでしょうか?
菊地さん:ご存じの通り、現在は保育士不足で取り合いのような状態になっていて、いい環境といい条件を出さないと 来てもらえない状態です。就職した後で 「こんなはずではなかった」ということ にならないよう、しっかり見極めてもら いたいです。「学校の先生に言われたから」「好きな先輩がいるから」で就職先 を決めるのではなく、実際に園に足を 運んで、見学してもらいたいですね。
てぃ先生:いい保育園は自信があるか らオープンにしています。学生のみなさ んも、玄関に入った瞬間の印象、園長 先生の対応、園の雰囲気など、実際に見れば自分に合った保育園かが少し見 えると思います。
菊地さん:調べることも大切です。例えば、同じ法人の園でも、就職したい園 の市町村によって手当が全く違う場合 も。家賃手当だけでも8万円以上異な ることもあります。
てぃ先生:保育園は星の数ほどある上、ネットで調べて、選べる時代です。みんながちゃんと選べば、選ばれない保育 園が出てくる。そうすれば、残業が多い、負担が大きいなどの保育園も改善せざ るをえなくなり、保育園業界全体の質 が向上することにつながると思います。
保育士を目指す読者のみなさんにメッ セージをお願いします。
てぃ先生:保育業界は「子どもファースト」で、子どものためなら保育士は何 時間残業をしても仕方ない、という考え が当たり前とされてきました。でもこれ からは、子どもと保育士のハッピー度合いは一緒じゃないとダメです。「保育士 の幸せを考えている」保育園が選ばれ る時代だと考えています。
菊地さん:そうやって保育業界に対する イメージをもっとポジティブに変えたい と思っています。そのためにも、みなさん にはしっかり吟味して、良い保育園を 選んでもらいたいですね。
ありがとうございました!