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保育士ジャーナル

2018年04月27日

保育教育界のリーダーに聞いた 今の保育と今後の保育


保育園は変わりつつあるけれど、当の担い手である保育士はどうなの? 離職率も高いし潜在保育士も多いし……。そこで数多くの保育士を輩出した鎌倉女子大の小泉教授に、教育者の目から見た学生や保育園のこと、今後の保育についてお話を伺った。

今は情報が多すぎて、体験しないうちに頭で判断してしまう

――小泉先生は大学で日々、学生たちと触れ合っておられますが、教育者から見て最近の学生はどんな傾向がありますか?
 ここ数年の大きな特徴としては、こどもと関わって保育の大変さを実感する前に「自分にはできない」「保育士に向いていない」と判断してしまう人が多いことですね。今は情報が溢れていて、知りたい情報は簡単に手に入る。だから体験するより先に頭で考えてしまうんですね。情報が入りすぎることで逆に不安が増してしまう。
――具体的にはどんな様子なんですか?
 たとえば実習に入った学生に、こどもから何を学んだかを聞くと言葉に詰まってしまうのですが、心配事だけは言葉になるんです。こどもに嫌われていると勝手に思い込んでしまう。「お子さんと何かトラブルがあったの?」と尋ねると、「いいえ別に」と曖昧な答えが返ってきます。そこで、園長先生に「実習生に問題がありましたか?」とお尋ねすると、「諸々指導したいけれど、褒め言葉しか伝えていませんよ」と答えが返ってきました。
 今は実習で何かあっても学生たちは励まされるばかりで、仕事を覚えるような段階じゃないような気がします。自信がもてない状況に学生を追い込まないことが実習の慣例になってしまっている。そうすると学生たちは、楽しい経験を自分のものとする前に、保育士に向いているかどうかを頭で考えてしまうんですね。
――それはなぜでしょう?
 近年の親たちは、こどもの人権を大切にする傾向があり、「一人ひとりのこどもを褒めて育てる」という信念が支持されてきました。一方で叱ったり、失敗することを避けるようにもなりました。こどもたちは、褒められて育つことが当たり前になっている可能性があります。つまり、褒められない経験=失敗する経験に対する恐怖が大きいのではないでしょうか。また、教育の現場にいて実感するのは、「褒める」大人や先生は多くなっているのですが、こどもたちの行動の意図や意味を汲み取らないで褒めている傾向があります。だから、こどもたちは褒められないとやらなくなるし、褒められないと「私にはできない」と思うようになってしまう。褒めるのではなくその人を理解して、褒める=理解という構図にシフトしていかなければいけません。
 たとえば、こどもが泣いているのはどうしてだろう? と考えるクセをつけることで、その子の気持ちがわかるようになります。「泣かないで」と言う前に、泣いている理由をきちんと理解していくということです。
 保育園での日々の営みは戦いでもあるのですが、こどもの心を理解しながら対応すること。これこそが保育士の専門性なんです。

こどもの素敵なシーンを写真で共有することで、こどもの心に触れられる

――保育士を取り囲む環境についてはどう思われますか?
 今、新しい保育所が増えていて、カフェのような素敵な休憩室をもつ保育園もあります。環境が整っているところにはよい人が集まり、よい保育ができ、よい循環を生み出しますし、そういった部分が注目を浴びて「保育の仕事って楽しそう」と思われるといいですよね。
 もちろん、職場のチームワークも重要です。3年以内に辞めてしまう人のなかには、こどものことを理解しようとする前に人間関係で潰れてしまうというケースもあります。
――先生の立場から見た、職場としての保育園選びのポイントは何でしょう?
 保育園は家庭と一緒です。どの家にもカラーがあるように、保育園にもそれぞれカラーがある。結局、自分にとって魅力的だと思う園を選べばいいと思うのですが、やはり、よい保育を実践している園は誰にでもわかるものです。それは保護者も同じで、「ここにこどもを入れたい」と思えるところが一番ですよね。
 逆に、何カ所か見学に行ってもピンとこないのは、判断材料が足りないからだと思います。何日か通えば職場環境やこどもの様子、先生方のチームワークもわかるので、実習はもちろん、気になる保育園でボランティアやアルバイトをするのもいいのではないでしょうか。

よい保育を実践している園は誰にでもわかる

――ところで今、ICT保育が注目されていますが、現状はいかがでしょうか?
 出欠管理に採用されるなど保育園も一部のICT化は進んでいますが、やはりデジタルデバイスの活用に慣れていない先生も多く、それがひとつの大きなネックになっています。
 ICTを使いながら保育を可視化するという取り組みもデイリーな手段になるまでには至っていません。たとえば、こどもの様子をICTで記録するのに、私はスマホを使えばいいと思うのですが、保育業務に支障をきたすと思い込んでいる人がまだまだ多いんです。
――写真でこどもたちの日々の様子を伝えるということですね。
 ニュージーランドでは先生方が全員スマホを持ってこどもの写真を撮り、情報共有しています。これを「ラーニング・ストーリー」といいますが、こどもの様子は先生の口から聞くより、写真のほうがより詳しくわかるんです。こどもの素敵なシーンを捉らえて写真にして、「今日はこんなことがあったよ」と見せてあげれば、親御さんも自分のこどもの心に触れられる。日本でもその瞬間を保育士と保護者が共有できたらすごいですよね。
――それはぜひ実現したいですね。では最後に保育士を目指す学生にメッセージを!
 保育士は1~2年では専門家になれない大変な仕事で、長く勤めて初めて保育のよさがわかります。こどもの生々しさと日々向き合っているので、苦しみや大変さに結びついてしまいがちですが、こどもって苦労しながらも毎日真剣に挑戦しているから、逆にそれが励みになるんです。だからこそ「現場へ帰れ、こどもから学べ」が大事だし、こどものよさがわかるまでがんばってほしいです。長い目で見て、自分のキャリアを育ててほしいですね。

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