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保育士ジャーナル

2018年09月12日

未来に必要とされる保育の考え方


保育環境研究所ギビングツリー代表  藤森 平司氏
1949年東京生まれ。建築関係、小学校教諭を経て1979年八王子市に省我保育園、さらに2007年新宿せいが保育園を開園。2002年保育環境研究所ギビングツリーを設立し、講演やセミナー等で「見守る保育」を伝える。

2018年4月、「幼稚園」「認定こども園」「保育園」の指針が同時改定され、保育園が「教育」の場として定められた。今まで厚生労働省の管轄だった保育園が、文部科学省の幼稚園と同じフィールドに立ったことにより、保育園の現場にはどのような変化があるのか? 特徴的な保育を実践する団体に、業界の変化と自社での取り組み、活動を聞いた。

こどもの主体的な活動を大切にする 「見守る保育」による学び

――今、「見守る保育」は全国に500園以上にも広がっているということですが、どのような保育なのか簡単に教えてください。
藤森:私どもが実践している「見守る保育」とは、一人ひとりの発達過程をしっかりと「見て」、必要なときに適切な援助をして「守る」ことです。こどもたちが何かしたいと思ったときにそれができるような環境づくりと、人とのかかわりのなかでこどもたちの主体性を育む保育に取り組んできました。このメソッドは多くの方に興味をもっていただき、年間1800人もの人が当園に視察に来られます。
とはいっても、これは何も特別なことではなく、世界ではあたりまえのことなんです。日本の保育が特殊で、私がやろうとしていることが世界のスタンダードなんですよ。
――なぜ日本の保育が特殊なのでしょう?
藤森:昔は兄弟がたくさんいたし、家族や近所など地域のソーシャルネットワークのなかで子育てをしていました。それが、核家族化でおじいちゃんおばあちゃんと別れ、少子化で兄弟が少なくなった。近所づきあいもなく、母子だけという家庭も増えてきました。コミュニケーションの基盤となる社会脳を育てる場所がなくなったんです。
今、人とのかかわりが苦手な若者が急増していますよね。それは社会脳が育っていないからです。感情を抑制する能力も育たず、目の前の欲望に負けてしまう。こういったことも基本的に幼児教育のせいです。
――ソーシャルネットワークのなかで子育てをすることが大事ということですね。
藤森:これは人類の進化からもいえることです。人間は2足歩行になったことで産道が小さくなりました。そのため胎内で脳を4分の1だけ育て、生まれてから脳を大きくするんです。つまり、乳幼児期が脳の発育に大きく影響するということです。

保育園は家庭の代わりではなく 社会の代わりである「共同保育の場」

――今回の三法令の改定では幼児教育を積極的に位置づけていますが、どのように評価されていますか?
藤森:日本の今の改革は、大学入試改革から高・中・小学校と降りてきています。これと一貫して幼児教育を改定しているのです。一貫はよいのですが、上から降りてきているものなので非常に無理がある。発達の違いを加味しないで一体化しようとしすぎていると思います。ただ、こどもが体験や経験から学んでいくという方向性はまさに幼児教育ですから、その点は評価できますね。
――この改定を踏まえ、保育園や保育士はどう変わっていくべきでしょうか。
藤森:保育園を家庭の代わりとするのではなく、社会の代わりである「共同保育の場」とするシステムを新しく作らなければいけません。親が働くから預ける場所ではなく、人を育てるために必要な施設に変えるべきで、そのためにはソーシャルネットワークとしての機能をもたせることが大事です。
教育基本法の中に「社会の形成者としての資質を備えること」とありますが、社会の形成者としての資質を備えるのだったら0歳から教育する必要があります。そういう意味では、私は働いていない人でも0歳からこどもを保育園に預けられるようにすべきだと思います。そのためにも保育者は専門性をもった教員職であるべきです。

人にはもって生まれたものがあり それを活かし合うから意味がある

――ところで、先生が保育士教育で一番大切にしていることは何ですか?
藤森:みなに幸せな人生を送ってもらうことです。家庭をもっている人なら家庭優先、独身の人も自分の人生を思い切り楽しんでほしい。保護者にも幸せになってほしいのはいうまでもありません。保育士や保護者が幸せかどうかはこどもに大きく影響しますから。
――その思いを形にするために、保育体制などで工夫していることはありますか?
藤森:当園ではチーム保育を行っていて、リーダーは1週間ごとにローテーションします。主任もいなくて全員がフラット。そして新人が優先で、ベテランは新人の足りないところをフォローするフォロワーになります。ですから新人にあれこれ指示しません。
当園の人材育成のポスターには「無理はしなくていい。自分の得意分野を活かせばいい」と書いてあります。人にはそれぞれもって生まれたものがある。それを活かし合うから意味があるので、みんな同じになる必要はありません。ただ、自由にしていいのですが、自分なりの理念はもっていてほしいですね。
――最後に、保育士を目指している人が心掛けるべきことを教えてください。
藤森:当園には私が考えた「見守る保育10カ条」があるのですが、その9条は「保育者の人権」です。保育者もひとりの人間としてこどもに接する、ということです。ただ親の代わりに面倒をみるだけではなく、将来の人材を作っているのだということ。つまり人類の存続を担っているという意味で、保育は人の生きる道を探すことだと思っています。いわば「保育道」です。そういう意識を常にもってがんばってほしいですね。

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