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ジャーナル

2020.07.14インタビュー

ケロポンズ インタビュー!

子どもたちの持つパワーや面白さ、

「生きてる丸ごと」のところを見て、 子どもたちと一緒に歩いて行こうよ

子どもたちはもちろん、保育士や親たちの心も

ガッシリとつかんで離さない陽気な音楽ユニット「ケロポンズ」。 今はアーティストとして活躍するお二人だが、かつては ケロちゃんは幼稚園教諭として、ポンちゃんは保育士として 「先生」の肩書を背負って働いていた時代もあったのだそう。 お二人それぞれが保育の現場で感じていたことや、 保育士という職業に対する思いなどについて、話を伺った。
ケロポンズ 子どもだけでなく大人も一緒に楽しめる音楽・体操・ステージで大人気のミュージック・ユニット。メンバーはケロちゃん、ポンちゃんの二人。代表作「エビカニクス」をはじめ1000以上の作品を制作。2013年より6年連続でフジロックフェスティバルに出演。
右:ケロちゃん(増田裕子) 国立音楽大学教育科幼児教育専攻を首席卒業。4年間の幼稚園勤務を経てバンド「トラや帽子店」で11年間活動。絵本「ねこのおいしゃさん」(そうえん社)など多数。 左:ポンちゃん(平田明子) 安田女子大学文学部児童教育学科卒業。幼稚園「りんごの木こどもクラブ」に5年間勤務。著書に『保育でポン!』(チャイルド本社)、絵本に『モジャキのくすり』(ほるぷ出版)など。

ーーお二人はそれぞれ保育の現場で働いておられた経験がおありだそうですね。なぜ、子どもと関わる職業を目指されたのですか?また、実際にどんな職場で働かれていたんでしょうか。

ケロちゃん 私は小さい頃からピアノと歌が好きで。さらに高校生の頃に、子どもって面白いよなぁ、という興味が芽生えてきたこともあって、音楽と子どものことが学べる場所を探して国立音楽大学に入りました。大学時代は、もう一回やりたいくらい楽しかったなぁ。音楽遊び研究のサークルに入って、子どもたちと野外活動をしたりしていました。

卒業後は、とても規律がキチッとした幼稚園に就職したんですが、これがちょっと、大変でした。子どもと遊んでいる時間だけが一番楽しくて、あとの時間はずっと辛かった。子どもたちをまとめ上げて決まった指導をするように求められたんですが、私はそういうのが苦手だったから。目指していた幼稚園の先生になれたのに、現実は…厳しかった!自分には、子どもをまとめ導くような立場より、楽しく一緒に歌ったり遊んだりする方が向いているのだとよく分かりました。 そんな時に、中川ひろたかさんと福尾野歩さんから「一緒に子ども向けの活動をやらないか」って声をかけてもらってバンド「トラや帽子店」を結成。そのタイミングで、幼稚園は辞めちゃいました。でも最初はバンドだけでは食べていけなかったから、掛け持ちで、横浜の「りんごの木こどもクラブ」で音楽教室の先生をやらせてもらって。 ポンちゃん 「りんごの木」って、横浜にある無認可の幼稚園なんだけど、保育園や幼稚園で働いていて「自分のやりたい保育をやりたい」と思うことがあった人たちが集まって作ったような園なんですよ。だから、大人も子どももイキイキしてる。ケロちゃんも、本当にのびのびと音楽教室をやってたんだよね。 ケロちゃん そうそう、音楽教室って言ってもピアノを教えるのは10分くらいで、あとはみんなで手作り楽器作ったり、バンドごっこやったり。メチャクチャだったけど、子どもたちも私も楽しんでやっていました。今大人になった当時の教え子に聞いてみると、教室のことは強烈な記憶として残っているみたいですね。(汗) それに教室があるときには前日から泊まり込みで行って、主宰の柴田愛子さんなどりんごの先生方と朝まで子どもや保育についてアツく語ったりしていたのも、とってもとっても楽しい時間でした。トラやが忙しくなってきて音楽教室はできなくなりましたけれど、当時のことは大事な思い出として残っています。

ーーポンちゃんはいかがでしょう?

ポンちゃん 私は、ケロちゃんとも深いご縁があった、その「りんごの木こどもクラブ」で5年間、保育士をやっていました。

と言っても最初から保育士を目指していたわけではなくて、もともとは小学校の先生になりたかったんです。それで小学校と幼稚園の先生の免許が両方取れる学科がある地元・広島の大学に進んだんですが、ちょうどその頃、「トラや帽子店」のいちファンとしてケロちゃんに出会って。初めてトラやのステージを見たとき、あまりの面白さに私の中でガラガラと何かが崩れるような衝撃を受けて、広島のみんなにもこの人たちを見せたいっ!と大学や学外サークルのみんなで、頑張って人を集めて、トラや初の広島コンサートを実現したんです。 コンサートは私の卒業式の翌々日に開催したんですが、ちょうどその頃は、私は教員採用試験に落ちてしまっていて、これからどうしようか?と模索していた時期だったんですよね。それでコンサートの翌日のふとした会話の中で、トラやの中川さんに「東京に来れば?」という言葉をいただいて、そうか、先生になる前にいろいろ経験してみるのもいいかなと思い、上京しました。 東京では、バイトをしながら教育関係の勉強会に行くような暮らしをしていたんですが、りんごのセミナーにも顔を出しているうちに、りんごの木の柴田さんに「あなたうちで保育士しない?」ってお誘いを受けたんです。私、当時は子どもとどうつきあっていいか判らなくなっていたのでお断りしようとしたんですが、「あらやだ 、子どもって人付き合い上手なのよ。大丈夫、子どもと遊んでくれればいいのよ」って言っていただいて。それならと、お誘いを受けてりんごの木で5年間保育をすることになりました。

ーー保育士として、どんな5年間をすごされたのでしょうか?

ポンちゃん 私の状況はケロちゃんの幼稚園での経験と、反対だったんですよ。ケロちゃんは子どもが大好きで幼稚園の先生になったけれど、自分と合わない厳しい職場で辛い思いをした。私は逆に深い想いやプランもないまま保育士になったけれど、のびのびと子どもに寄り添える環境だったので体当たりで自由にやらせてもらってました。

と言っても初めは「先生として何かやらなきゃ!」と意気込みすぎているところもありました。初めて担当したのは2歳半の子どもたちだったんですけど、2歳半ってまだ靴も履けないカバンも持てない、トイレもできないんですよね。だから私、これは大変だ!ってアレもコレも手伝ってあげてたんですよ。そしたら、しばらくして保育後に先輩に呼ばれたんです。「すっごい、子どもたちを手伝ってあげてるね」って。だから私「はい、2歳半の子って1つ1つの事をするのが本当に大変なんですね!」って返事したら、「そうなのよ。大変なの。だけどね、ひとつひとつが子どもができるようになるチャンスだから、時間がない時とかは仕方ないけどそのチャンスを子どもから奪わないでね」って教えてもらえたんです。 そう言われてハッとしました。落ち着いて観察してみると、確かに子どもって、一個一個自分でやろうとしているのよね。やりたい気持ちがいっぱいなの。そこに大人が手出しをせずに、子どもの心が動いていることを止めない、見守るっていうのが、りんごの木のスタンスでした。大人の都合で止めさせずに、寄り添えるところはできるだけ寄り添おうよって考え方に、目を開かれましたね。 りんごの木での経験から、私、子どもたちって小さく見えるけどとっても立派ですてきでやさしくって。だから子どもを子ども扱いするのではなく、人間同士として接することを教えてもらいました。 ケロちゃん そうそう、りんごの木で会うポンちゃんは本当に子どもに溶け込んでいるというか、子どもからも大人扱いされていなくて、園のゆるキャラみたいな存在でしたよ。

ーーお二人のそんなご経験が、現在のケロポンズとしての活動にもきっと生かされているのでしょうね。ちょうど今年がご結成から20年目ということですが、この20年を振り返ってみて、改めてどのような思いをお持ちですか。

ケロちゃん そうですね、ポンちゃんが相方じゃなかったら多分ここまでやってこれなかったと思います。私の方が先輩なので、ポンちゃんの方は気を使っていると思いますが。(笑)

ポンちゃん 気を遣ってますよ!こんなに痩せてしまいました。 ケロちゃん どこが痩せてんのよ! ポンちゃん あははは…。私もケロちゃんだからここまでやってこれましたし、やっぱり20年やってると、ちっちゃい頃にコンサートに来てくれていた親子がおばあちゃんとお母さんになって、その子どもとまた見に来てくれるんですよ。3世代。子どもに向けているからそういうことが起こる。これって本当にめっちゃ幸せなことだなって思うんです。

ーーコンサートは、今でも年間100本以上もこなされているそうですね。ステージではどのようなことを大切にされているのでしょうか。

ポンちゃん コンサートでは基本的に、自分たちもお客さんと一緒に楽しむということを大切にしています。

私たちのコンサートには「これをしなきゃいけない」という決まりごとはないんです。ダンスの時に立たない子がいても、寝てるお父さんがいても、それはその人の自由。 ケロちゃん それにみんな一緒にコンサートを作っている感覚でやっているので、泣いている赤ちゃんに「泣いてるの?」「怖くないよ」なんて話しかけたりすることもあります。すると、泣き止むこともありますね。

ーーコンサートの合間を縫って行う、保育士向けのセミナーも大好評だと聞いております。セミナーの内容はどのようなものですか?

ポンちゃん 子どものコンサートと同じような内容です。相手が大人だからといって、特別なことをやるわけではないです。

ケロちゃん 「パネルシアターってこうやって作るんだよ」といった説明を挟んだり、ポンちゃんが子育ての話をしたりは、あります。でも、基本はコンサートとあまり変わらないんです。 ポンちゃん まずは、今日は楽しんで帰ってくださいね、という気持ちがあって。そうしてパネルシアターや手遊びを一緒にやる中で、もし、今度子どもたちとやってみたいと思えるものがあったら、ぜひ取り入れてみてくださいね、と。

ーーセミナーを通して現場の保育士に伝えたいことは。

ケロちゃん 保育って、自分が楽しんでやるのが一番よと。あとは子どもたちに寄り添って子どもたちの声を聞くことが大切だと思います。

ポンちゃん 私たちは日々、子どもって面白い生き物だよね!と感じているんですが、保育士さんはそれを分かっている人だと思うんですよね。その思いを共有したいと思っています。 子どもの持つパワーというか、面白さというか、「生きてる丸ごと」のところを見て、子ども達と一緒に歩いて行こうよという気持ちでやっています。私たちはそのために、ちょっとお手伝いをしている感じですね。

ーー最後になりますが、これから就職活動の時期を迎える学生に向けて、メッセージをいただけますか。

ポンちゃん 保育士って、得るものがたくさんある職業だなって思うんです。日々、子どもからもらえるものがあるとっても愛がある仕事だと思う。ぜひ、それを感じて欲しいなって思います。

ケロちゃん 長く続けている保育士さんたちは、子どもと一緒に毎日心を動かしてピュアな気持ちをいっぱいもらってるから、純粋な子どもみたいな人が多いの。もらいすぎて、みんな肌がツヤツヤだもん! これからの日本を作っていくのは子どもたちなわけだから、保育士ってとってもやりがいがあるお仕事だし、子どもの面白さは、とにかく触れ合ってみないと分からない。だからね、やって欲しい、みんなに。ぜひぜひ!  

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